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音声入力アプリは、絶対に要る — キーボードだけでは、AIに渡しきれない

AI実践・仕組み化

夜明けの窓辺、朝の光の中に置かれたスマートフォン

AIを使うなら、音声入力は「あった方がいい」ものじゃありません。「入れなければならない」ものだと思っています。僕はもう、キーボードを8割方打っていません。

前に、会社の情報を片っ端から喋ってAIに渡していった話を書きました。財務も、取引先のことも、社員さん一人ひとりの得意なこと・苦手なことも。あの「喋って渡す」を足元で支えているのが、この音声入力です。

なぜそこまで言い切るのか。順番に書きます。

打っていた頃は、思考が途切れていた

正直に言うと、僕は最初、音声入力をうまく使えませんでした。

頭の中にあることを、止めどなく言葉にして出し続ける。これが、最初はやけに違和感があった。喋るだけでこんなに大変なのか、と思ったくらいです。今から振り返ると、頭の中を出力する”道”が、自分の中にまだできていなかったんだと思います。

でも、その感覚はいつの間にか消えました。慣れると、考えたことがそのまま流れて出ていく。

後になって気づいてみると、キーボードで打っていた頃は、指が思考に追いつかなくて、途中で考えが途切れていました。打っている最中は、それが普通だと思っていて、途切れているとすら気づいていなかった。今でも、会社で周りに人がいるときはキーボードを打ちますが、その時だけ「あ、遅いな」と、はっきり感じます。

一番の差は、「解像度」だった

音声入力を入れると、入力が速くなる。そう思われがちですが、僕が一番大きいと感じているのは、速さじゃありません。

AIに渡すコンテキストの、解像度が違うんです。

キーボードで打つとき、人はどこかで端折っています。面倒だから、ではありません。打つのに時間がかかるから、「まあ、このくらい書けば伝わるだろう」と、時間と引き換えに、無意識のうちに削ってしまう。音声だと、その時間の制約がほとんどないので、削らずに事細かく渡せます。

大事だと思っているところは、気づけば何度も、繰り返し喋っています。同じことを繰り返すのは、そこを強く感じているからで、その温度まで含めて渡せる。キーボードできれいに整えた文章からは、そこが落ちてしまいます。

差は、見た目にも出ます。このブログを書くのに使っている入力欄で言うと、キーボードで打つとせいぜい2〜3行。それが音声だと、一気に17〜18行、下手すると20行近く入る。入力の量そのものが、目で見て数倍違います。

しかも、喋っているうちに、考えが増えていく

もう一つ、これはキーボードでは無かった感覚です。

キーボードで打ちながら何かを出しているとき、思考は、その打った内容から先に増えません。頭にあることが、そのまま出ていくだけです。

ところが音声だと、話しているうちに、頭の中が動き出す。考えていたことを口に出すと、それだけで考えが整理されて、話しながら新しい気づきや着想が止めどなく出てくる。そして、その生まれたばかりのものを、また声でそのままコンテキストに足していける。

渡す解像度が上がるだけじゃなく、渡す中身そのものが、喋っている最中に増えていく。ここも、音声入力の大きな効きどころだと思います。

なぜ、そのコンテキストがAIの答えを変えるのか

AIを使っていて、本当に差が出るのはコンテキストだと感じています。

しかも、ネットのどこかに転がっているコンテキストじゃありません。自分しか持っていない、自分の会社しか持っていない、自分のグループしか持っていないコンテキスト——本当に効くのは、そっちです。

そういうものは、検索しても出てきません。ネットに無いんだから、自分で入れていくしかない。そして、それをキーボードだけで入れるのは、量も解像度も、全然足りない。だから僕は、絶対に音声入力なんだと思っています。

ソフトは何でもいい。乗り換える前提で選ぶ

じゃあ何を使えばいいか。ここは、あまり気負わなくていいと思います。

音声入力のソフトは、これからもどんどん良くなっていきます。だから僕は、年間契約の縛りには最初から入りませんでした。安くなるプランはありますが、良いものが出たら乗り換えるに決まっている、と思っていたからです。そして実際、その通りになりました。

もう一つ。AIに渡す用途なら、音声認識がそこまで正確じゃなくても大丈夫です。多少の誤変換は、AIが前後の文脈から読み取ってくれる。だから、ソフトはなるべく安いもので十分だと思います。例外は、メールやチャット、文章そのものを音声入力の出力のまま使いたいときで、ここは今の精度だと手直しが要るので、一度AIに通して整えてもらう手もあります。

使い始めたのは今年の1月、最初に選んだのはAqua Voiceでした。音声入力ってこんなにいいのか、と目覚めさせてくれたソフトで、正直かなり気に入っていました。ところが3月の中盤あたりから、変換の精度が急にガクッと落ちて、動きも重くなった。AIに渡す用途なら多少の誤変換は構わないと書きましたが、さすがにそれを超えて、不満が出るレベルでした。それで、SuperWhisperに乗り換えた。会社のノートPCでは、今もこのクラウド型を使っています。

自宅のPCは、また別です。ローカルで動く音声入力のモデルがあると知って、たしか土曜の朝に、自分で組んでみました。あっさり動いて、しかも自分で作ったものだから、なんだかかわいい。変換の精度もクラウドより良い気がするし、速さも遜色ありません。おまけに無料です。少し強力なグラフィックボードを積んでいるので、そこにWhisper large-v3というモデルを載せています。会社のノートはクラウド、自宅はその場で完結するローカル、という使い分けに落ち着きました。

使う場面は、正直けっこう選ぶ

いいことばかり書いてきましたが、弱点もあります。

弱点は、周りに人がいるときに弱いことです。会社で使っていると、社員さん同士の話し声まで拾って、テキストに混ざってきます。今はみんなの机が近いこともあって、正直、一人になれる部屋が一つ欲しいな、とよく思います。

それに、声に出すのがなんとなく恥ずかしい、というものもあります。ちょっとした言葉の意味を調べたいとか、我ながら基本的なことを聞きたいとき、隣で「そんなことも調べてるんだ」と思われるのは、やっぱり気が引ける。人の名前が出るような話も、声には出しづらい。そういうときは、素直にキーボードで打って聞いています。周りに人がいるときの音声入力は、なかなかやりづらいんです。

なので、工夫でしのいでいます。一人になれる時間を見つける、たっぷり喋りたい日は思い切って自宅で仕事をする。移動中も、けっこう喋っています。歩きながら、頭の中にあることを声で放り込んでおく。着く頃には、AIの側で下ごしらえが済んでいる。移動の時間が、そのまま仕事に変わる感覚があります。

おわりに

音声入力は、派手なテクニックではありません。ショートカット一発で何かが劇的に変わる、という類のものでもない。

でも、AIに効くのが「自分だけが持っているコンテキスト」だとすると、それを入れる蛇口として、これは”あった方がいい道具”ではなく、“入れないと始まらない道具”だと思っています。

その、自分だけのコンテキストをどうやって溜めて、AIに効かせ続けるか。そこには、もう一段、仕組みの話があります。それは、また別で書きます。