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3つのAIに同じデータを渡したら、Claudeだけ違った

AI導入ストーリー

厚い雲の切れ間から一条の光が差し、遠くの低い丘だけを照らす夕暮れの丘陵

前回は、会社のことを全部 Gemini に渡したら「社長が抱え込みすぎ」と言い当てられた、という話を書きました。今回はその続きです。あれだけ Gemini に入れ込んでいた私が、なぜ今は別の AI をメインで使っているのか。その乗り換えのきっかけになった出来事を書きます。

結論から言うと、3つの AI に同じデータを渡してみたら、1つだけ明らかに違ったんです。それが Claude でした。

1. Geminiがメイン、でもAIにはのめり込んでいた

当時、私のメインは Gemini でした。

Google Workspace に標準で付いてきて、追加のお金もかからない。メールの返信案も、長い資料の要約も、会社のことを渡してからの相談も、ぜんぶ Gemini でこなしていました。Workspace を入れてからの1ヶ月ほどは、ずっと Gemini が主役でした。

ただ、「Gemini で十分だから、他はいらない」という感じでは、まったくありませんでした。むしろ逆です。年が明けたあたりから、AI に対する自分のアンテナが、それまでとは比べものにならないくらい高くなっていました。仕事のやり方そのものが、AI 中心に変わりつつあった時期です。気になるものは、片っ端から触っていました。

ChatGPT は課金して、ときどき使っていました。特許まわりで弁理士と話す必要があったとき、「クレームって何ですか」みたいな基本的なことを噛み砕いてもらう。知らない分野に踏み込むときの相棒です。Claude も前から気になっていて、年が明けてから、こちらも触り始めていました。

つまり、Gemini をメインに回しながら、手元には3つの AI が揃っていた。そういう状態だったんです。きっかけは、ある切実な用事のほうから来ました。

Gemini・ChatGPT・Claude の3つのロゴ

2. 海外輸出の原価計算で、検算がしたかった

そのころ、自社で初めて海外への輸出をやることになったんです。

国内向けの原価計算なら慣れています。でも海外は勝手が違いました。関税、海運業者の見積もり、アメリカの中間業者の手数料、現地での発送費、通関にかかる細々とした費用。見たこともない項目が、英文でずらっと並んでいる。これを商品1個あたりの原価に落とし込む作業が、とにかく複雑でした。

頑張ればできなくはない。でも、原価は値付けの土台になる大事な数字です。間違えたまま走ったら、売っても利益が出ていなかった、なんてことになりかねない。だから、自分の計算が合っているのか、どうしても確認したかったんです。

そこで思いついたのが、「同じ条件を複数の AI に投げて、答え合わせをすればいいんじゃないか」ということでした。普段使っている Gemini に加えて、ChatGPT と Claude にも、まったく同じデータを渡してみる。検算のつもりです。3つとも同じ数字を出してきたら、まあ合っているんだろう、と。

3. 数字は3つとも同じ。でも「見せ方」が違った

やってみたら、計算の結果そのものは、3つとも大体同じでした。1個あたりの原価は、どれもほぼ同じ数字に着地した。とりあえず計算は合っているらしい、と安心しました。

ところが、差が出たのは別のところでした。「見せ方」です。

Gemini と ChatGPT は、答えを出して、それで終わり、という感じでした。「1個あたりの原価はこれです」と数字を返してくれる。それはそれで正しい。

でも Claude だけは、固定費と間接費をどう考えて、どう振り分けたのか、その筋道をきちんと示してくれました。しかも、ただ説明するだけじゃない。自分で数字を入れ替えられるエクセルの形で出力してきたんです。海運費がもう少し上がったら、為替が動いたら、原価がどう変わるか。こっちの手元で、すぐにいじれる状態で返ってきた。

正直、ちょっと驚きました。同じデータを渡しただけなのに、片方は「答え」を出して終わり、もう片方は「仕事でそのまま使える形」にして返してきた。

でも、白状すると、このとき思ったのは大したことじゃありません。「あ、Claude っていいな」と、ただそれだけです。計算の精度は、どれも変わらない。でも Claude は、なんというか、業務に寄り添った答えを返してくれる。それをちょっと感じた。深い気づきとか、そんな立派なものではありませんでした。

ただ、この小さな「いいな」が、あとからじわじわ効いてきます。

4. それからClaudeばかり使うようになった

この一件があってから、私は何かにつけて Claude に聞くようになりました。

最初は検算のつもりで横に置いただけだったのに、気づけば「これ、Claude にも聞いてみよう」が口癖みたいになっていた。返ってくるものが、いちいち実務に寄っている。だんだん、こっちが本命になっていきました。

そうなると、無料のままでは足りなくなります。それで Claude の有料プランを契約しました。月20ドルくらいのものです。ところが、これが3日でいっぱいになった。普通に使っているだけなのに、数時間で「ちょっと待ってください」と止められる。今まさに乗っているのに、あと少しで片付くのに、というところで中断される。これが地味にこたえました。

3日で我慢できなくなって、上の月100ドルのプランに上げました。年間にすると1,200ドルくらい。パートさん1人の月給にも届かない額です。社員を1人雇うことを考えたら、桁が違う。道具にはお金をかける。経営では当たり前にやってきたことなのに、なぜか AI になると急に財布の紐が固くなる。自分がまさにそうでした。あとから振り返ると、ケチって我慢していた3日間が、いちばんもったいなかったと思います。

ただ、ここで一つ補足しておきたいことがあります。Claude が「いちばん優れている」と言いたいわけではない、ということです。

3つを使ってみて分かったのは、それぞれ得意分野が違う、ということでした。ChatGPT は、知らない言葉を噛み砕いてもらう辞書として優秀です。Gemini は Google Workspace の中にいるので、Google のサービスと一緒に使うと便利です。Claude は、出力がそのまま実務で使える。どれが最強、という話ではなく、向いている場面が違うんですね。

そのうえで、私の仕事のやり方には Claude がいちばん合っていた。だから自然と使う頻度が増えて、最終的にチャットはほぼ Claude だけになっていきました。

5. でも、まだ「コピペ」がだるかった

Claude に一本化して、しばらくは満足していました。

ただ、使い込んでいくうちに、別の不満が出てきます。コピペが、とにかく面倒くさいんです。

AI に文章やコードを作ってもらって、それをコピーして、自分のファイルに貼り付けて、体裁を整える。一回ずつは大したことのない作業です。でも、これを何十回も繰り返していると、地味に時間を食う。せっかく賢い相手と話しているのに、最後の「貼り付けて整える」ところだけ、ずっと自分の手作業なんです。この「間」が、だんだん気になってきました。

例えるなら、賢い相談相手はいるんだけど、その人は頭だけで、手がない。考えてはくれるけど、実際に動かすのはこっち。そんな感じでした。

この不満が、次の一歩につながります。考えるだけだった AI に「手」を持たせて、実際に作らせる。そういう道具に、このあと出会うことになるんです。それを使って、私は初めて「自分の会社のためのアプリ」を、自分の手で作ることになります。

その話は、次回に書きます。プログラミングなんて一行も書けない私が、売上管理アプリを10日で作った話です。